景観

景観とまちづくり

景観について、最近興味深く感じたことから紹介します。

昨年10月、「横浜市景観シンポジウム」に参加しました。
既に景観計画の施行された自治体もあるなかで、景観行政では先駆者的な存在の横浜市はこれから景観計画の策定に着手する段階で、意外にゆっくりペースなことに少し驚きました。

横浜は350万都市で、地方の1県~4県分の人口を抱えています。
面積も広く、多種多様な景観を有しています。
市民との協働でとなればこれから十分時間を掛けることの方が望ましいのだろうとシンポジウムを終えて感じました。

第一部、東京大学 西村幸夫教授の講演では”日本の中の横浜を意識するより、世界の横浜を意識した景観計画を”という期待が端々にありました。

しかし、そのシンポジウムで最も興味深かったのは第二部のパネルディスカッションの中での発言でした。

町工場、京浜工業地帯、運河、首都高速道路高架下などの風景に親しみを感じている人達が存在するということでした。
一般的な意見ではこのようなものは忌み嫌われ、明るく親しみのある方向に修景しなくてならないものの筆頭に挙げられているものです。

そこで長い間、生活をしている人達にとって見れば、そこが慣れ親しんできた日常風景であり愛着があるということです。
また、その風景をみて”面白い空間”だと感じている外部の方も存在します。
長い時間をかけ、徐々にそのような景色が出来たわけですから、昭和の歴史の一断面ともいえるのかも知れません。

そうなると景観というものは”みんなが美しいと感じるもの”だけではないのだと思います。
『美しい景観を創る会』の選定した”悪い景観100景”に対し”悪い景観100景を見直す”という考えもあって然るべきです。
このように互いに考えをぶつけ合いながら長い時間をかけ、景観を論じていく必要があるのでしょう。
一部の有識者だけで”こうあるべきだ”などと決定づけられるものではないようです。

おもしろいことは
“美しい景観を創ろう”と主体となって動いている世代は、これまで”悪い景観を創造してきた”世代が中心であり
“悪い景観を考え直そう”という世代は、生まれた時からずっと”悪い景観の中で育った”世代のようです。

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